第95回市況

△強含み ○保合 ▼弱含み

  タモ・トネリコ・シオジ  

木の呼び方は地方によって違いがあることは、今までにも書いてきましたが、中でもトネリコ・タモ・シオジは名前が非常に混乱している典型的な例のようです。しかし、これらが英語では『アッシュ(ash)』として、とりまとめられているようです。なぜ日本では一つにまとめられないかというと、日本は地形が入り組み、地層も変化に富み、季節の変化があり、年間を通して高温多雨である。これは、樹木が育ち進化するのに最適の環境のようで、それゆえに地域により少しずつ違いのある樹木に変化しているようです。例えば杉にしても、太平洋側の表杉と日本海側の裏杉とはかなり違い、また屋久島の屋久杉も両者の中間的なところがあるというように、今回のテーマのタモ・トネリコ・シオジもモクセイ科トネリコ属に属しますが、大別してシオジ類とトネリコ類とに分けられています。シオジ類は一般にかなり大木になり、日本ではシオジやヤチダモがこの部類に入り、セイヨウトネリコもこのシオジ類で大木に育ちます。一方、トネリコ類は、トネリコやヤマトアオダモ、アオダモなどで、こちらは高さが10mぐらいで直径も50pを超えることのない、いわゆる小高木です。しかし、木材になった時はどれも性質が似ているようです。日本での用材としての話の前にヨーロッパやアメリカでの使われ方を取り上げてみます。ヨーロッパのセイヨウトネリコはシオジ類で、かなりの大木に育ち、ブナや栗ぐらいの強度があり、また曲げにも強いし、木目も通っている。建築の内装材、船の内装にも使われていますが、最も有名なのはスポーツ用具で、野球のバット、ホッケーやポロのスティック、ボートのオールなどです。家具としても『アール・ヌーボー』の作品のなかでもアッシュでできた椅子が何点かあるようです。北アメリカでは『ホワイト・アッシュ』と呼ばれ、曲げ木の椅子等に利用されています。日本では、シオジ類のヤチダモは相当の大木になり、高さ25m、直径1mにもなり、本州中部から北海道にかけて自生していて、もっとも蓄積量が多い樹種です。昔は欅や栗、桑の代用品という位置にありましたが、外国産のアッシュがもてはやされていたので、日本でも徐々に用途がひろがりました。今ではヨーロッパやアメリカと同じように、建築の内装材、建具、家具、船の内装、いろいろな器具の部材、そして楽器や運道具の材など利用価値は広がっています。野球観戦をする際などぜひバットに注目してみてください。