― 竹 ―
一般工芸に使われる竹は、マダケ、ハチク、モウソウチクなどですが、その中でもハチクは一日で35p以上も伸びるといいます。モウソウチクでも30p以上伸びるそうです。そうすると3日で1mも伸びることになり、よく勢い良く伸びる様を「破竹の勢い」といいますが、なるほどと思わされました。竹は漆と同様、日本では縄文時代から使われていたようです。特に竹で編んだ器の上に、漆を塗った「藍胎漆器(らんたいしっき)」と呼ばれるものが東北の亀ヶ岡遺跡などから出土されています。竹で作られている製品は種々ありますが、籠・ザル・竿・茶筅や茶さじ、少し変わったところでは、笛や尺八といったものでしょうか。現在私たちが使用しているプラスティックや金属でできたもののほとんどが、かつては木や漆や竹でできていました。中でも竹はその特有の弾力性と耐水性で非常に重要でした。例えばコップや歯ブラシ、箸、楊枝、櫛などで時代劇を見ているといろんな場面で登場し、その利用価値の多さには驚きます。日本の土壁は竹の筋の周りに粘土質の土を固まらせてできています。これは樹木がセルロースという筋の周りにリグニンを固まらせてできているのと同じであり、すべて強度が出るように考えてのことだそうです。土壁の上に漆喰を塗れば防水性が高まり、壁面の強度としては申し分なくなります。しかし漆喰を塗らなくても数百年間生きつづける土壁もあります。千利休が設計した『待庵』もその一つで、四百年になります。現在、国宝に指定されている茶室は三棟ありますが、この『待庵』もその一つです。窓の障子の桟にも竹が使われていてとても趣きがあるそうです。一度訪れてみたらいかがでしょうか。今後、竹を使った新しい作品もいろいろ作られてくるでしょう。楽しみに待ちたいと思います。 日浦佳子
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